ヘーベルハウスで家を建てようと思って、Webで検索をすると大体の人が突き当たるテーマがあります。
それは…「ヘーベルハウスは寒い!」
Googleで検索してみてください、ヘーベルハウスは寒いって声がかなり出てきます。
でも、ヘーベルハウスに実際に住んでいるオーナーの中には「全然そんなことないよ~快適だよ~」と言う人もいます。
寒い(暑い)は人によって感じ方は違います(氷点下10度の冬の千歳の某基地で、ランニング中暑いからと防寒具脱いで走っていたら上官に怒られた私とか…)ので、一概に寒い暑いを定義するのは難しい話ではありますが、何か定量的な数値で表せないのか?
というわけで、今回のテーマは「ヘーベルハウスは寒いのか、その断熱設計から断熱スペックを調べてみよう!」です。
断熱性能
断熱性能と一言で言っても、これはどう測ったら良いものなのか…と早速壁にぶち当たったわけですが、そこでお世話になっている家系ブログを盛り上げる会に知恵を拝借することに。
#家系ブログを盛り上げる会
— ズブロッカ大佐 (@CZubrowka) 2020年9月27日
断熱性能について、素材(ポリスチレンフォーム、ロックウールなど)毎に、各地域で必要とされる厚さなどをまとめている記事を作られている方。リンクと内容一部引用させてほしいので、よろしくお願いいたします。お礼は私のブログからの微々たる流入くらいですが…
省エネルギー性に関する基準(断熱等性能等級4)
早速レスをいただいたのは三級うんちく士さん。
氏はタマホームのオーナーさんで、タマホームでは地域区分別に断熱性能の違う商品を展開しているとのことです。詳しくは以下のブログ参照してね。
この記事の中でも触れられていますが、省エネルギー性に関する基準という法律で日本全国を8つの地域区分に分けて、それぞれの地域の断熱材の厚さなどの基準を示しているそうです。
自分の住んでいる地域がどの位置にあるのかは以下のリンクから探してみてください。国交省の公開資料です。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/shoenehou_assets/img/library/chiikikubun-sinkyuu.pdf
私は神奈川県川崎市民ですので、地域区分だと5に該当します。ちなみに実家の旭川市は2だそうです。
断熱等級4
高気密・高断熱の家については、家ブロ会のスペシャリストであるクロセ氏がアンサー記事を書いてくれました。ありがとうございます。
ZEHやHEAT20関連ではUA値で規定されていますが、各部位の断熱材厚みなんかはとくに指定はないんですよね。
UA値から厚みを逆算してもいいですが、建物をある程度想定する必要があり、少々骨が折れそう。
何かいい基準がないかなあと思っていましたが、省エネルギー対策等級4(断熱等級4)技術基準が使いやすそうなのでこれを使うことにしました。
なるほど、では、この省エネ法による断熱等級4の基準をベースに、ヘーベルハウスのスペックを検討してみましょう。
断熱材種類
早速登場するのが、断熱材の種類一覧ですね。
ヘーベルハウスは、旭化成が誇る『ネオマフォーム』を断熱材に使用しています。また、一部では『スタイロフォーム』も使用しています。
というわけで、ネオマフォームは赤、スタイロフォームは青で囲ってみました。
断熱材厚さ基準
省エネルギー対策等級4技術基準に書かれている必要な断熱性能のうち、鉄骨住宅であるヘーベルハウスに該当する部分を抜き出してみました。
Fの列がネオマフォーム、Eの列がスタイロフォームになります。
『外装材の熱抵抗』という箇所がありますが、ヘーベルハウスは外装材にへーベル版(ALCパネル)を使用しています。
断熱材に比べたら微々たるものですが、へーベル版にも雀の涙ほどの断熱性能があります。
まず、ヘーベルハウスの壁の構造ですが以下の図を参照してください。
ヘーベルハウスの壁は2020年現在、75mmのへーベル版となっています。また、図の通り鉄骨柱は外張り断熱で外気に直接晒されないような設計になっています。これは、ヒートブリッジによる熱損失を避けるための設計ですね。
外張り断熱について、ネオマフォームサイトですが簡単にメリットを書いている記事があるので参照してみてください。この対策で、鉄骨がヒートブリッジ化することを避けるようにヘーベルハウスでは断熱設計していることが分かります。
へーベル版(ALC)の熱抵抗値は、以下の式で求められます。
熱貫流率(U値)=1/熱抵抗値(m^2K/W)
熱抵抗値(m^2K/W)=厚さ(m)/熱伝導率(W/mK)
以上より、
- へーベル版の熱伝導率は、0.17
- 厚み75mmのへーベル版の熱抵抗値は、0.44K/W 熱貫流率U値は、2.26
- 厚み100mmのへーベル版の熱抵抗値は、0.58K/W 熱貫流率U値は、1.7
という数値がはじき出せます。
ヘーベルハウスの壁の断熱スペック
ヘーベルハウスの壁のスペックは以下の通りです。
-
外壁へーベル版:75mm
- ネオマフォーム:45mm
- 鉄骨部分のネオマフォーム:20mm
断熱材厚さ基準の表では、以下に該当します。
壁へーベルの厚さは75mmですので、上記の表だと「外装材の熱抵抗」は0.15以上0.56未満の範囲になります。
ヘーベルハウスは外張り断熱で「断熱層を貫通する金属部材」はない設計となっているので、基本的に「無」の部分が該当します。
鉄骨柱の入っていない壁の部分は「一般部」となりますので、その行の中でネオマフォームを示す「F」列を見ていくと、断熱等級4に必要なネオマフォームの厚さはオレンジで囲った「35mm」ということが分かります。
鉄骨柱の外断熱用のネオマフォームの部分は、「鉄骨柱、鉄骨梁部分」の緑で囲った「F」列を参照すると、「10mm」と言うことが分かります。
つまり、ヘーベルハウスの標準の壁断熱設計は以下の通りのスペックとなります。
ヘーベルハウスの地階床断熱スペック
ヘーベルハウスの地階床の断熱スペックは以下の通りです。
-
外壁へーベル版:100mm
- スタイロフォーム:60mm
断熱材厚さ基準の表では、以下に該当します。
地階床に関してはスタイロフォームを採用しているので、「E」列を参照することになります。
床へーベルの厚さは100mmですので、上記の表だと「外装材の熱抵抗」は0.56以上の範囲になります。
ヘーベルハウスは鉄骨の上にへーベル版を敷いて、その上に断熱材を敷く設計のため、「断熱層を貫通する金属部材」はない設計に該当し、基本的にこの列は「無」の部分が該当します。
というわけで、床は「一般部」扱いとなりますので、その行の中でスタイロフォームを示す「E」列を見ていくと、断熱等級4に必要なスタイロフォームの厚さはオレンジで囲った「35mm」ということが分かります。
つまり、ヘーベルハウスの標準の地階床断熱設計は以下の通りのスペックとなります。
ヘーベルハウスの屋根断熱スペック
ヘーベルハウスの屋根の断熱スペックは以下の通りです。
屋根については困ったことに、へーベル版の外壁表面に断熱材が施工されているため、外装材の熱抵抗にへーベル版の微々たる断熱効果を計上できないです。
というわけで、表の「外装材の熱抵抗」部分は0.15未満から算出してみます。
構造上、鉄骨梁も柱も100mmへーベル版の上にありますので、「一般部断熱層を貫通する金属部材の有無」は「無」とします。
そうしますと、E列(スタイロフォーム)で「50mm」、F列(ネオマフォーム)で「40mm」が必要断熱材厚さとなります。
基準ではネオマフォームだけで40mmで済むところを、ヘーベルハウスでは65mmのネオマフォームと、更に25mmのスタイロフォームで断熱しています。
熱抵抗値ベースで合算すると…
-
ネオマフォーム65mm / ネオマフォームの熱伝導率0.020 =3.25W/(m・k)
- スタイロフォーム25mm / スタイロフォームの熱伝導率0.040 = 0.625W/(m・k)
合計熱抵抗値は3.875W/(m・k)のスペックと言うことになります。ここにへーベル版100mmの微々たる熱抵抗値(0.58)も入れますと、4.455W/(m・k)となります。
断熱等級4ベースでのヘーベルハウスの性能値
以上より、断熱等級4で求められている断熱材の性能については、ヘーベルハウスの標準設計は満たしているようです。
断熱等級4では性能不足であるという意見もありますが、今回はそこには触れません。
我が家の断熱設計を数値にしてみた
ヘーベルハウス標準設計をベースに、断熱等級4の基準を満たしているかどうかを検証しましたが、実際に今建てている我が家の断熱設計の図面がありますので、これをベースに我が家の断熱性能を見ていきましょう。
基準とする表は以下とします。
今回は「断熱材の熱抵抗値の値」をベースに見ていくこととします。
そして、以下が我が家の詳細断面図です。
屋根または天井
図面から読み取れる我が家の屋根の断熱設計は以下の通りです。
- スタイロフォーム:31mm~
- 屋根へーベル版:75mm
- グラスウール:100mm
では、それぞれの材料を熱抵抗値に変換します。
- スタイロフォーム31mm / スタイロフォームの熱伝導率0.040 = 0.77W/(m・k)
- へーベル版75mm / へーベル版の熱伝導率0.17 = 0.44W/(m・k)
- グラスウール100mm / 高性能グラスウール16Kの熱伝導率0.038 = 2.63W/(m・k)
合計すると… 3.84W/(m・k)
あれ?足りなくね?www
図面上、スタイロフォームが31mm~ってなっているので、スタイロフォームを厚くすれば、屋根または天井基準の4.0W/(m・k)に届くはず。今度聞いてみよう…
※スタイロフォーム38mm以上あれば4.0は達成できます
壁
図面から読み取れる我が家の壁の断熱設計は以下の通りです。
- 壁へーベル版:75mm
- ネオマフォーム:45mm
では、それぞれの材料を熱抵抗値に変換します。
- へーベル版75mm / へーベル版の熱伝導率0.17 = 0.44W/(m・k)
- ネオマフォーム45mm / ネオマフォームの熱伝導率0.020 = 2.25W/(m・k)
合計すると… 2.69W/(m・k)
基準上では1.7W/(m・k)なので、基準値を超えていますね。
床(外気に接する部分)
我が家にはインナーガレージがあるので、インナーガレージ上の居室がこの外気に接する部分になります。
図面から読み取れる我が家の床の断熱設計は以下の通りです。
- スタイロフォーム:10mm
- 床へーベル版:100mm
- ロックウール:100mm
では、それぞれの材料を熱抵抗値に変換します。
- スタイロフォーム10mm / スタイロフォームの熱伝導率0.040 = 0.25W/(m・k)
- へーベル版100mm / へーベル版の熱伝導率0.17 = 0.58W/(m・k)
- ロックウール100mm / ロックウールマットの熱伝導率0.038 = 2.63W/(m・k)
合計すると… 3.46W/(m・k)
基準上では2.5W/(m・k)なので、基準値を超えていますね。
土間床等の外周部(外気に接する部分)
我が家は玄関土間がこの基準に該当します。
図面から読み取れる我が家の土間の断熱設計は以下の通りです。
- スタイロフォーム:60mm
- コンクリート基礎:220mm
では、それぞれの材料を熱抵抗値に変換します。
- スタイロフォーム60mm / スタイロフォームの熱伝導率0.040 = 1.5W/(m・k)
- コンクリート220mm / コンクリートの熱伝導率1.6 = 0.13W/(m・k)
合計すると… 1.63W/(m・k)
基準上では1.7W/(m・k)なので、微妙に足りてないですねぇ…
まとめ
以上の数値を表で一覧化しました。
図面で見る限り、我が家は屋根及び土間の周辺断熱が、断熱等級4の値を下回っています。
私の図面の読み込みが足りないのか、計算を間違っているのか、図面の表記が足りないのかはわかりませんが、少なくともこれが計算上の事実です。
平均で均すと、断熱等級4前後の断熱設計にはなっているとは言えるとは思います。
とはいえ、我が家はZEH仕様にしていません。
ヘーベルハウスにもZEH仕様があり、その場合は基礎下断熱などに付加断熱が追加されるそうです。
また、今回はあくまで壁及び天井と床下の断熱材及びへーベル版での熱抵抗値を計算したに過ぎず、窓の断熱性能は計算に含めていません。
ヘーベルハウスの窓では標準で、「アルミ樹脂混合のLow-E複層ガラス(アルゴンガス入り)」を採用しており、通常のアルミサッシの窓よりは断熱性能は高いですが、樹脂サッシや木製サッシに比べると性能は低いです。
これらも踏まえてきちんと家の断熱性能を計算するとなると、ちょっと大変なので今回はそこまではやっておりません。
サッシ性能の具体的な数値は以下の表を参照してみてください。
https://www.jsma.or.jp/Portals/0/images/sash/gijutu/19-1001.pdf
結論
もしあなたが、ヘーベルハウスで家を建てることを検討していて、ヘーベルハウスは寒い(もしくは暑い)という点を気にされているのならば、ヘーベルハウスの担当に断熱性能について数値レベルでの設計がどうなっているのかを聞いてみてください。
断熱性能に不安があれば、付加断熱をお願いすることも可能です(追加費用はかかりますが)。
昨今、家の性能は向上し、有名な一条工務店さんなんかは「高気密・高断熱」の住宅を売りにしています。
残念ながら、ヘーベルハウスの様な鉄骨住宅はその構造上の特性から気密性を高めることは得意ではありません。
ただ、断熱材を付加することで断熱性能を向上させることは可能ではあります。
ヘーベルハウスを検討されている方は、この辺も留意した上で選ばれることをお勧めします。
え?お前はこの断熱性能で満足してるのか?って。
私、北海道で家を建てるなら鉄骨住宅にはしない(RC造かスウェーデンハウスがいいなぁ)し、多摩川の辺に住まう者として、洪水が心配だから鉄骨にしたんでね…
あと、
寒ければ、暖房をガンガン焚けばいいじゃない
~マリー・ズブロッカ・アントワネット(2020年)
そういうことです。