注文住宅を建てることになったら、理想の間取り作りに力を入れるポイントになると思います。
そして、よくあるパターンとして注文住宅だから!と0ベースで間取り設計を始める方が意外と多いようです。
ハウスメーカーも大体の希望を聞いて、間取りを提案してきます。
それが大当たりするパターンもありますが、そうでもないパターンもあるようです。
注文住宅設計で、間取りの失敗をしないための方法。これは永遠の課題なのかもしれません。
今回はこのテーマで書いていきたいと思います。
注文住宅で間取り失敗率の高い項目は?
SUUMOで注文住宅の間取りで失敗したランキングを出していたので、記事を拝借しますと…
1位の収納の作り、2位の部屋の広さ、4位の配線計画、8位の生活動線。
この失敗に共通することは、新居での生活スタイルを設計できていなかったことと言えると思います。これは半分は施主の責任だと私は思っています。
その他の失敗は、建築の素人ではわからないのだから、建築する側がプロとしてきちんとシミュレーションして施主に伝えるべき点です。これは業者側に文句を言っていいと思います。
今回は、前半の「施主の責任での失敗」について掘り下げていきます。
施主の生活スタイルを分析しきれていない設計者
さて、「新居での生活スタイルを設計できていなかった」原因とは何でしょうか?
設計側が能無しだった可能性ももちろんありますが、これって施主側の分析不足も大きいんです。
自分たちの生活スタイルを分析すれば、おのずと生活動線は浮かび上がってくるはずなんです。
建築家は、施主の生活スタイルをしっかりヒアリングし、そこから施主の現在の生活動線を解析していき、その結果を踏まえて新居の生活動線をベースとした間取りを提案します。本来であればそれが当たり前なんですけど、残念ながらそれをきちんとできている設計者があまり多くないのも事実です。ハウスメーカーよりも工務店や設計事務所の方が良い間取り提案が多いと言われる原因の一つです。
住宅設計は、施主の主観に近い目線で設計することが第一でありつつ、建築素人である施主には見えない目線の設計を付加価値として提案するのが、建築家に求められているスキルなんですね。
金払ってるんだから、そこも含めてやれよ!という意見もあると思いますが、結局普段は表に見えない施主のプライベートを詳らかにしないと見えてこないものもあるわけで、その部分も設計者が予想して全部何とかしろっていうのは少々乱暴だと思うわけです。
まあ、ちゃんと聞けよ設計者!というのはもちろんあるとは思いますが。
施主が設計者に伝えるべき情報
じゃあ、設計者に自分たちの生活スタイルに合った良い設計をしてもらうために、どんな情報を伝えればいいの?と思うでしょう。
まあ、それをきちんと引き出せるのが設計者の腕の見せどころではありますが…
一番手っ取り早くて確実なのは、現在の実際の生活動線を設計者に見せてしまうことです。
それをベースに、設計を進めるのが一番確実です。
実は以前、同じようなお話を書いているのでそちらの記事も参照していただければ…と思います。
はい、読みましたか?え?長いから読んでない?
じゃあ、かいつまんで…
- 今住んでいる家の間取りを紙に描いてみる
- 生活動線をそこに書いていく
- 便利な所と、不便なところをマーカーでも入れる
- 部屋の名前(リビングとか客間とか)と、今実際に使っている使い方の名前を書いていく
あら不思議、これで今の生活スタイルで住まいに足りていない要素、今の家で無駄になっている要素、生かしたい間取り、改善しないとならない間取りがピンポイントで浮かび上がってきます。
今までの生活の中で見えてきた、問題点や改善要素のヒントはこの作業で大体洗い出せてしまいます。
そこから新居にあたっての今までの家にはない+要素を新規追加していくことになります(ガレージのない家にガレージをつけるとかね)。
我が家の間取り設計
うんちくだけだとイマイチわからないので、我が家の具体的な例を挙げます。
現在住んでいる賃貸物件の間取り図
これはマイホームデザイナーで30分くらいで書いた、我が家の今現在の賃貸住宅の図面です。階数を入れ忘れましたが、下から順番に1階、2階、そしてロフトです。
我が家の家族構成は、夫婦二人で子供なし(予定もなし)。
図面を見てもらうとわかると思いますが、今の家でも実は普通に生活する分には必要十分を満たせています。
ロフトも含めると収納だけで5畳半くらいあります。
LDKも夫婦で暮らすには狭すぎもせずですし、キッチンも意外と広々とつかえています。
ゾーニングも、1階と2階で分離されており、寝室から先は不可侵領域となっています。
そう、元々の設計がなかなか良いんです。
じゃあ、今の家の問題点は何か?
我々は以下の点を、注文住宅設計時の改善点要件として挙げました。以下に挙げたもの以外は現状で満足しています。
- 寝室が妻の書斎スペースを兼ねているので分離したい(夜中まで作業したい)
- 夫の書斎スペースが現状ダイニングテーブルになっているので、分離したい
- 洗濯物は室内干し派なので、現状の洗濯室は狭すぎるから広くしたい
- 掃除洗濯系の収納は洗濯室で一元管理したい
- 衣類系の収納が分離しているので一か所にまとめたい(WIC化)
- 現状リビングにピアノがあるが、妻の書斎スペースを楽器室兼様にしたい
- ロフトがはしご式だが、はしごを使うような移動はNG
そして、新築にあたり完全新規要件としては以下の要件を提示しました。
- 外のパティオに置いてあるバイクはビルトインガレージ化すること
- ロフトに置いてある主に夫のアウトドア用品や自動車やバイクグッズなどの収納は、ビルトインガレージと外置き物置に配置すること
- 客間として使える和室を作ること
- 妻の書斎は楽器練習室になるので防音仕様とすること
- アウトドアリビングを採用したいので、LDKは3階とすること
- トイレと寝室は同じフロアとすること(トイレは一か所だけにすること)
以上の要件を提示し、何度か図面をやり取りし最終的にどうなったか…
新居の間取り図
旧居と新居の比較
まずは新旧比較をざっと羅列します
- 面積が旧居47㎡、新居ビルトイン込みで100㎡(広さ二倍)
- 狭かった玄関が60センチ間口が広くなった
- 旧居のクローゼットと同じ面積のWICができた
- 洗濯室は約2.5倍になった(室内干しスペース倍増)
- 妻の書斎兼楽器室兼客間和室が純増
- 夫の書斎スペースが純増
- 寝室が単機能化
- キッチンが若干狭くなった分半畳パントリーができた
- ビルトインガレージができた
では、我々が旧居からの改善点として挙げていた点は解決しているのか?一つずつチェックしていきます。
①寝室が妻の書斎スペースを兼ねているので分離したい(夜中まで作業したい)
→妻の書斎が独立したので解決しました。妻が夜中まで何やらやっていても寝室で寝ている人を気にする必要はありません。
②夫の書斎スペースが現状ダイニングテーブルになっているので、分離したい
→専用の書斎室とまではいかないまでも、寝室横に小部屋的な書斎スペースができたので解決しました。趣味スペースとしてはビルトインガレージも使えるので良しとします。
③洗濯物は室内干し派なので、現状の洗濯室は狭すぎるから広くしたい
→洗濯室が2.5倍の広さになり、解決しました。また、洗濯室とWICが同じフロアにあるため現状の家事動線から大きく逸脱していないです(距離は若干伸びたけど、大人二人なので週末一括洗濯でも何とかなるのであまり問題なし)。
④掃除洗濯系の収納は洗濯室で一元管理したい
→洗濯室に半畳収納ができたので解決。
⑤衣類系の収納が分離しているので一か所にまとめたい(WIC化)
→現状1.5畳のクローゼットと半畳のクローゼットが衣類収納となっていますが、3畳弱のWICができたので解決。
⑥現状リビングにピアノがあるが、妻の書斎スペースを楽器室兼様にしたい
→一階の和室を防音仕様にしたので、解決。
⑦ロフトがはしご式だが、はしごを使うような移動はNG
→はしご移動はなくなったので解決。
新居設計の概要
旧居からの改善項目はすべてクリアできました。また、新規追加要件もすべてクリアできています。
見比べてもらうとわかると思いますが、なんとなく配置としては旧居の1階2階の下に、新しい部屋用のフロアが追加されたような設計になっていることにお気づきでしょうか?
そう、旧居から生活動線があまり変わっていないんです。全く同じというわけにはいかなかったのですが、旧居で慣れた生活動線を捨てて0から作るのもリスクなので、旧居の生活動線のベースを生かしつつ、新要件を追加したらこうなりましたという設計になっています。
ヘーベルハウスから最初に提案された設計は実はもっと違いました。この間取りはほぼ私が考えた間取りです。
今回の土地の形状から、建蔽率と容積率の都合上出せる間口サイズやら面積やらのベースはへーベル側で作ってもらい、その枠の中で私が部屋の割り当てを調整するという作業の結果こうなりました。
実は最初に提案された間取りから2回しか変更していないんですよ。悩んだのは寝室と併設するWICと私の書斎スペースの配置だけ。
後は細かい収まりやら設備の種類を変更したり、窓のサイズをどうするやらの細かいところの変更だけで設計は完了しました。
なので、とっても早くお話が進んだ訳です。
我が家の設計のまとめ
我が家の間取り設計は、今住んでいる賃貸の間取り設計をベースに、改善要素取り込みと追加要素取り込みだけでほぼ完成しています。
たまたま、今の間取りが我々の生活スタイルに合っていたというラッキーなケースではあると思いますが、今現在の自分たちの生活をきちんと分析しアウトプットできていたからこそ、間取りの設計でそこまで右往左往しなかったというのは間違いない事実です。
ここから平屋にするとなったら、おそらくとても大変な設計となったでしょう。
長くなりましたが、我が家の間取り設計事例のご紹介でした。
これから間取り設計を進める方、少しでも参考になれば幸いです。
間取り作成ソフトについて
間取り図作成について、私は有償の『マイホームデザイナー』を使っていますが、無償のソフトウェアもあります。
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