家系ブログのくせに旅行の話ばかりじゃないかと痛いところを突かれたので、ヘーベルハウスの最大の特徴である『ヘーベル版』こと、ALCについて書いておこうかなと思います。
あまり誰も信じてくれないのですが、私建築学生だったので、このあたりの知識もあるんです!
なお、もし建築士資格とっていたら、自衛隊に入隊したときに施設科(要は工兵隊)に配属されていたらしいです。あぶねぇ…戦車に乗れないところだった。
前置きが長くなりましたが、早速本題に入っていきます。
ヘーベル版とは
旭化成ホームズが展開する『ヘーベルハウス』というブランドは、その名の通り「ヘーベル版」が最大の特徴です。
ヘーベル版の特徴は旭化成さんがまとめてますので、説明はそちらに譲ります。
まあ、サイトの中身をかいつまんで特徴を挙げますと…
- 軽量である
- 耐久性に優れる
- 耐火性に優れる
- 無機質であるため環境に優しい
とのこと。
建材オタクでもないとヘーベル版ところか、ALCなんて知りませんよね?
というわけで、私も建材オタクではありませんが、ALCの歴史についてウンチクを垂れ流してみようと思います。
ALCコンクリートとヘーベル版
ヘーベル版について語る前に、ALCについて語らねばなりません。
Autoclaved Lightweight aerated Concrete(略してALC、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリートということです)
ALCコンクリートと言ってしまうと、頭痛が痛いと同じくらい残念な感じになるので気をつけましょう。
普通のコンクリートとALCって何が違うの?って言うところですが、まずコンクリートとは「砂、砂利、水などをセメントで凝固させた硬化物」です。
古代ローマ帝国でも使われていた由緒ある建材ですね。
なお、コンクリートだけだと面の圧力には強いのですが、引張圧力には脆いので、後に逆の特徴を持つ鉄と組み合わせることで、お互いの弱点を克服し合う最強の建材、『鉄筋コンクリート』が出来上がります。これを、Reinforced Concreteというので、RCと略されます。
古代ローマ時代のコンクリート建造物はRCではないので、構造としては脆いのですが、有名なパンテオンは鉄筋が入っていない最大のコンクリート製のドームだとか。ローマ人はすごいですね。
一方、ALCというのは、高温で発泡加工した軽量のコンクリートです。コンクリートでできた軽石を想像していただければ…(説明が雑)
ALCの誕生
ALCは、1920年代にスウェーデンで開発されたそうです。ヨハン・アクセル・エリクソン博士という人がALCを発明したそうです。ヴァイキングの子孫たちが作ったんですね(エリクソンと聞くとヴァイキングってイメージが…)。
これが、1930年頃に工業生産化されたそうです。
ALCの工業化実験は、あの有名なヴァルター・アードルフ・ゲオルク・グローピウスが携わっています。え?誰って?
近代建築の四大巨匠(彼と、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ミース・ファン・デル・ローエの3人合わせて)の一人とされる建築界では超有名人です。意匠建築をやっていてこの四人の名前を知らないといったら、もうそれはモグリです。
で、このグローピウスさんってあのバウハウスの初代校長でもあります。
彼の作品の一つ『テルテン・ジードルング』という集合住宅でALCを採用しています。
詳しくは以下のリンクで。
当時はレンガみたいにALCのブロックを積んで建材として使っていたようですね。
このALCブロックの何が良いかって、軽いので施工も早い。
というわけで、北ヨーロッパから旧ソ連に広がったそうです。そう、寒いところに。
雪が降る地域では、工事行程が短縮できるのは大変助かるわけです。
また、ALCは発泡コンクリートというだけあって、中に空気層があります。それが保温効果をもたらすので、断熱性もある程度期待できるというメリットが有りました。ある程度ですよ?日本の高気密断熱材のレベルを連想しちゃだめです。
スウェーデンは北欧、寒いところですがALCはそんな極寒の北欧でもクラックが発生することもなく丈夫な建材として重宝されたようです。
ヘーベル版の誕生
時は戦後間もないドイツ。後のシュトゥットガルト大学の学長になるレオンハルト博士が、ヨゼフ・ヘーベル氏に対して「ALCを使ったパネル作ってみない?」と話を持ちかけ、当時戦争が終わったばかりで荒廃していたドイツの復興の役に立つ!と乗せられたヘーベル氏は頑張って開発。
ALCを鉄筋コンクリートみたいに中に鉄筋を通すことでALCのパネル化に成功し、これが『ヘーベル・ウォール』となり特許を取得。1943年には、最初の製造工場を稼働させています。
彼が作ったヨゼフ・ヘーベル社。このロゴどこかで見たことありません?
このヘーベル・ウォールはドイツでウケて、その後ヨーロッパ各国に広がっていくことになります。
1947年当時のALC生産量は、年間2万㎥。しかし、19年後の1966年には140万㎥もの生産量に増えます。70倍ですね。
ヘーベル版の日本への導入
1966年、旭化成の宮崎輝というおっさん…じゃなくて、後の旭化成の社長となる人物がヘーベル社と技術提携に漕ぎ着けます。
そして、日本にもヘーベル版が導入されるようになり、霞が関ビルディングや帝国ホテルタワー、東名高速などに採用されました。
そして、1972年に旭化成ホームズ『ヘーベルハウス』が誕生することになります。
まとめ
ざっと駆け足でヘーベル版の歴史について触れてきましたが、20世紀に入って開発された比較的新しい技術なんですね。
そして、日本人が大好きなドイツ製です。ドイツ製って堅牢で強いイメージがありますね。
というわけで、ヘーベルハウスの最大の特徴である『ヘーベル版』について、ちょっとしたウンチクでした。