車やバイクを趣味とする人ならば誰もが一度は憧れるビルトインガレージ。
私も注文住宅を建てるにあたって、ビルトインガレージを必須条件にしていました。
理想は車とバイクが収まるビルトインガレージ。
サイズ的に難しければせめてバイクだけでもビルトインガレージは必須(将来サイドカーに乗りたいのでサイドカーサイズは必須)という条件で、ヘーベルハウスにオーダーを出しました。
しかし、ヘーベルハウスが出してきた答えは…
一番最初にヘーベルハウスから提案されたプランは、ピロティガレージだった。
ピロティガレージとは何ぞや?という方もいるでしょうから、その辺りの解説を。
ピロティとは
二階建て以上の建物の一階が、柱を残して壁のない吹きっさらしのフロアのことをピロティと言います。ピロティとはフランス語で杭という意味です。
有名なピロティ建築は、巨匠ル・コルビュジエによる『サヴォア邸』ですね。
ピロティ建築を世界で初めて採用したとも言われる巨匠ル・コルビュジエ。その後いろんな建築家が真似しました。
コルビュジエについてはまた別の機会に取り上げようと思います。
以前紹介した、ミース・ファン・デル・ローエと違って日本国内にも彼の設計した建物がいくつか残っています。
www.colonel-zubrowka.com
東京都庁を設計したことで知られる日本の三大建築家の一人と言われる丹下健三も、コルビュジエの影響を受けた一人で、東京都庁や江戸東京博物館でピロティを採用していますね。
さて、このピロティですが、とある日本のハウスメーカーも大好きなんですね。
それが旭化成ホームズのヘーベルハウスです。
かっこいいピロティが作れるハウスメーカー
ピロティ空間を作るのって、実は普通の木造では格好良くなりません。
少ない柱で二階がまるで浮いているように見せる大開口を出してこそ、ピロティは格好いいわけです。
つまり、木造在来工法ではピロティはなかなか上手く作れません。柱がどうしても多くなりますので。
2×4系などの壁構造系は全然ダメです。壁がないと構造を維持できないので、ピロティという発想とは対極にある構造でしょうね。流行りの木質パネル系の高気密高断熱系の家とピロティは相性が悪いのかもしれませんね。
ピロティ土台をRCとかで作ってその上に木質パネル工法の家を乗せるという手もあるかもしれませんが。
ピロティをかっこよく見せられる構造は、ラーメン構造系か、RC造か、鉄骨造系です。
木造住宅メーカーなら住友林業でしょうね。ビックフレーム構造なら、少ない柱で大開口間口を作れるので、ピロティも様になりそうです。
住友林業の家の構造については以下の記事を参考までに…
格好いいピロティの条件…それは大開口間口を作れる構造。
そう、鉄骨ラーメン構造はピロティをかっこよく見せられる条件を満たしているんですね。
ラーメン構造で鉄骨…ヘーベルハウスが名乗りを上げないわけがない!(笑)
ヘーベルハウスは元々大都市の狭小地に建てる家が得意
ヘーベルハウスのコンセプトは『都市型住宅』なんですね。
比類無き壁は阪神大震災の大火災では、防火壁(Firewall)の役割を果たしたとか色々宣伝してますが、ヘーベルハウスは建物が密集する都市住宅地の中で家主を守る城塞を作りたかったのかもしれません。
城塞というのは大げさですが、東京なんかの住宅密集地では隣家との間に庭どころかほとんどスペースもないくらい密集しています。窓を開けたら隣の家の壁なんてざらです。
東京都世田谷区の広い平屋の家を持つ磯野さんのお家は、どれくらいの価格なのかを真面目に調べた不動産サイトなんかが色々ありますが、首都圏の住宅密集地では磯野家の様な広い庭のある平屋なんて一般庶民には手が出ません。
そんな狭い土地しか庶民には手が届かない首都圏で、何とか空間を確保しようとすると上に逃げるしかないわけですね。
というわけで、3階建てだとか4階建ての一戸建てというのが求められるようになります。
3階建て都市型住宅と言えばヘーベルハウスの得意技というわけです。
狭小住宅地の特徴
狭小住宅のデメリットは色々ありますが、隣の家との近さに伴う採光の問題とか、庭や駐車スペースが取れないとか、所謂普通の二階建てのお家では当然にあるようなものが、狭小住宅では得られないという点でしょうか。
狭小住宅地を狭小住宅地たらしめているのは、その住宅地の用途地域設定によります。狭小住宅地というのは、大抵が「第一種中高層住居専用地域」に指定されています。
高級住宅街と呼ばれる場所…例えば有名どころでは田園調布(発想が古いけど、割と我が家から近所なので筆者には馴染み深いんです!)は、「第一種低層住宅専用地域」に指定されています。
どういう規制かというと、10mもしくは12mの絶対高さの制限や、敷地境界から建物の外壁までの距離を1mもしくは1.5m離す外壁の後退距離制限、建蔽率は30~60%未満、容積率は50~200%までという厳しい制限があります。
具体的に言うと、100㎡の土地に平屋を建てようとすると、最大60㎡の家しか建てられないわけです。それだけ土地のサイズに対して家のサイズの規制が厳しいので、広い家を建てたくば、広い土地を買わねばならないというわけですね。
一方、狭小住宅地に多い「第一種中高層住居専用地域」は、高さ制限が日影さえクリアすれば10mを超えても問題ないし、建蔽率は大体60%、容積率も200%以上だったりするところが多いです。
つまり土地が狭くても、3階建てとかにすれば延床面積で100㎡超えの家を建てることができます。
敷地境界線から家の外壁までの間も、50cm空ければ良いので、敷地ぎりぎりまで家を建てることができます。
建蔽率や容積率といったお話の説明は、自分でするのは(元建築学科の癖に)、色々絵を使ったりと面倒くさいので、こちらの記事をご紹介。
米陀さんが運営される『超トレンドマニア』住宅情報のサイトから記事引用の許可をもらえましたので、是非ご覧ください。
ヘーベルハウスとはライバル関係にあるのかはわかりませんが、同じく鉄骨構造の雄であるダイワハウスで注文住宅を建てられた施主さんでもあります。
狭小住宅にピロティをつけるメリット
さて、話が若干ピロティから脱線しましたが、ちゃんと意味のある脱線なのです。
- ピロティとは何ぞや
- ヘーベルハウスはピロティが得意
- ヘーベルハウスは狭小住宅地に家を建てるのが得意
こういう話の展開でしたが、つまりヘーベルハウスは狭小住宅地の家にピロティをつけるのが得意ということですね。
それにどんなメリットが?
駐車スペースは実は場所を無駄にとる
一戸建ての家を持たれる方は、大抵は自家用車もあります。
自家用車ってことは駐車スペースがいるのですが、一般的な普通乗用車(3ナンバーサイズ)の駐車スペースには15㎡の面積が必要になります。
ただでさえ狭い狭小住宅に、車を止めるためだけに15㎡も取られるのは貴重な家の面積を減らしてしまうことになるわけです。
ビルトインガレージとピロティガレージの差
ビルトインガレージは、延べ床面積の1/5までは容積率算定には入れなくて良いという法律があります。どういうことかと言うと、例えば延べ床面積100㎡の家であれば、20㎡までのビルトインガレージであれば、ガレージの分は容積率から外してもらえるという決まりです。
ということは、事実上120㎡の建物にして、20㎡分をガレージにすることができるわけですね。
一方、ピロティガレージはどんなに広くても容積率には含まれません。
狭い土地でも車2台とか、車+自転車やらバイクやらと置きたいという場合、1階を屋根付きの駐車・駐輪スペースとしても、家の居住スペースの広さを削る必要がない訳です。容積率には含まれないので。
ヘーベルハウスの提案する駐車スペース
敷地面積に余裕がない都市部の狭小住宅地において、駐車スペースはある意味でデッドスペースになるわけです。
そこでヘーベルハウスはその駐車スペースというデッドスペース分、居住空間に生かせる設計としてピロティガレージを推してくるわけですね。
これは重量鉄骨によるラーメン構造で、大開口が作れる故の得意技という奴です。1階でケチった容積率を、2階3階でふんだんに使い、狭い土地ながらも広い家を実現することができるわけです。
ヘーベルハウスでビルトインガレージを作る
ここまで書いてきたように、ヘーベルハウスでは駐車場は基本的に屋外にあるものという考え方があります。
もちろんビルトインガレージの実例もあるようですが…こんなのとか。
我が家はベンベのバイクに乗っているので、室内保管絶対主義を掲げ、最初からビルトインガレージを要望していたのですが、3回目のプラン提示くらいまではずっとピロティガレージの提案のままでした。
多分営業氏はBMWがバイクメーカー(車よりも歴史が古いんですよ!)であることを知らないか、BMWだと言っていたから車と勘違いしていたのか、なかなか設計に伝わらなかったのか、とにかくピロティガレージで問題ないですよね?という頓珍漢なことを何度も言ってきたので、実はヘーベルハウスとの打ち合わせで私が一番内心キレたのは、この件だったりします。
ビルトインガレージ事情
ビルトインガレージと聞いたとき、それは屋内だと思いますか?それとも屋外だと思いますか?
これは家の設計によって違います。
ガレージの中にソファとか置いて完全に居室みたいにしているガレージもありますね。
しかし、基本的にヘーベルハウスではビルトインガレージとは、「屋外」という扱いになります。
ビルトインガレージは外構と本体の狭間にある?!
家の本体工事と、家の周りの外構工事と分かれているのはご存じかと思います。
知らない人はiPhoneの中の女性とか、OK Googleとか話しかけて聞いてみると教えてくれるんですが、まあ大体違う「外交」を教えてくれるので気を付けてください。
注文住宅というのは家の本体設計は建築士が行うのですが、家の外については外構担当の範囲になっていることが多いです。
門扉やら庭やら塀やらですね。
家の玄関ポーチまでは建築費用に入っているけど、ポーチから一歩外に出るとただの土…みたいなね。
その土の部分を舗装したりタイル貼りにしたりなんてことをやるのが外構なのですが、ヘーベルハウスでビルトインガレージを作ろうとすると…
ガレージ自体の建物部分は設計士の範囲だが、ガレージ扉(シャッター含む)は外構担当の設計範囲になる。
私も最初説明を受けたときには訳が分からなかった。だが、こういうことだ。
シャッターとかガレージドアは、家本体の外に取り付けるものだから、家の設計ではなく外構の範囲に入るのだと。門扉とかと同じ扱いだというのだ。
そんなことを言ったら、屋上に上がるための外階段とかも外構担当ですかい?と聞くと、それは家本体の設計範囲だと言う。混乱である。
シャッターの取付設計は外構担当がするので、図面に起こせないと設計担当が言うものだから、我が家では外構打ち合わせが終わるまでシャッターの設置図面どころか、費用すら出てこなかった訳です。それが後に問題になったわけですが…
また、屋外扱いですので、ガレージ内側の内壁を木目の板で~とか考えてると、普通に外壁へーベル版になってがっかりします。一部の施主さんは内壁を普通の板壁とかにしている例がありますが、あれどうやって交渉したのかな…
ただ、我が家は準防火地域だったので、もしかしたら、その影響で内壁とはいえ防火壁にしないとダメだったのかもしれません。エンジンなんて可燃物どころか、燃えないと全く役に立たない鉄屑になっちまう。
ビルトインガレージをつける場合に絶対にやるべきこと
ヘーベルハウスにはそういうよくわからない理屈のルールがあるということは、ご理解いただけたでしょうか。私は未だにご理解できておりませんが、そういうルールなんだそうです。
というわけで、ヘーベルハウスでビルトインガレージをつけたいと考えている将来の施主の皆さんに私からアドバイスします。以下のアドバイスを肝に銘じて、営業と交渉しましょう。
- 一番最初の打ち合わせで希望を聞かれたときに、必ず「ビルトインガレージ」が欲しい。ピロティガレージは絶対だめだ!鍵のかかる扉で守られるガレージだ!雨風が入ったらダメだ!としつこく言うこと!
- 最初の建築請負契約時にシャッターが設計に入らないし、シャッター費用を見積もりに乗せられないケースが多いので、「シャッターを設計に落とし込んで、費用を算出しないと絶対契約しない」と食い下がれ!
- 室内ガレージを目指しているなら、ガレージ内壁はへーベル版じゃなくて普通の壁にしたい旨を、“別の”ハウスメーカーのビルトインガレージ実例をもっていって見せて「こうしたい」と希望すること。できないと言われたら「〇〇林業ならできるのに?」と他社乗り換えもあり得る空気を見せつつ本気で考えさせよ!
これくらいの強いこだわりを見せて交渉に臨むことを、私は自身の実体験から強く推し進めます。
がんばれ!ビルトインガレージヘーベリアンの卵たち!!
必ず勝ち取るのだ!ピロティではないガレージを!
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