建築士には一級建築士と二級建築士がいます。厳密には木造建築士もいます。
ハウスメーカーや工務店で注文住宅を建てる際には、担当の設計士が就きます。
担当設計士が二級建築士だと不安に思う人も中にはいるようです。実際家を建てる友人からそんな相談を受けたことがあります。
二級建築士よりも一級建築士に建ててもらった方がいいのか?
今回はこの点について書いていこうと思います。
※2020年3月27日、Twitterにて『三級うんちく士@マイホーム・家づくりのブログ建築中!』様よりご指摘をいただきましたので、一部修正しております。
三級うんちく士様、ご指摘感謝します。
一級建築士と二級建築士の違い
一級と二級の違いを説明する前に、まず建築士って何さ?というところからお話します。
建築士とは?
『建築士法に基づき、建築物の設計、工事監理などの業務を行う者。 国土交通省の免許を受ける一級建築士と、都道府県知事の免許を受ける二級建築士及び木造建築士とがある。』
とされていますが、建築士法的には『木造の建築物で、延べ面積が百平方メートルを超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない。』とあります。
要は、2階建の木造、あるいはその他の構造で高さ13m以下でかつ軒高9m以下の2階建で延べ面積が100㎡以下であれば免許は必要ない訳です。
ただし、特殊建築物を除きます。特殊建築物とは、学校、病院、劇場、映画館、観覧場、公会堂、集会場(オーディトリアムを有するもの)、百貨店です。
日本では建物を作る際には様々な法律に縛られています。その法律に基づき建物を設計し、施工管理できるというのが建築士の資格なのです。
木造建築士とは
木造建築士は、都道府県知事の免許を受けて、以下の規模の建物を設計、施工管理できる設計士です。
- 階数2階建て以下
- 延べ面積300㎡以下
木造に限られるとはいえ、一般的な住宅程度の規模であれば木造建築士でも十分事足りるわけですね。
また、木造建築士は木造のスペシャリストとされますので、2階建ての木造住宅にこだわるのであれば、経験豊富な木造建築士が所属する会社で建てるのもありかもしれません。
二級建築士とは
二級建築士は、都道府県知事の免許を受けて、1級建築士と比較すると、設計できるサイズに制限のある建築士資格です。
- 学校・病院・劇場・映画館・公会堂・集会場・百貨店などの公共建築物は延べ面積が500 ㎡以下のもの
- 木造建築物または建築の部分で高さが13 mまたは軒の高さが9 m以内のもの
- 鉄筋コンクリート造、鉄骨造、石造、れん瓦造、コンクリートブロック造もしくは無筋コンクリート造の建築物または建築の部分で、延べ面積が30 ㎡ - 300 ㎡、高さが13 mまたは軒の高さが9 m以内のもの
- 延べ面積が100 ㎡(木造の建築物にあっては、300 ㎡)を超え、又は階数が3以上の建築物(ただし、第3条の2第3項に都道府県の条例により規模を別に定めることもできるとする規定がある)
という制限があります。
一級建築士とは
サイズ制限のない建築士免許です。
木造や二級建築士と違い、国土交通大臣の免許となっています。
違いを大雑把に言うと…
本当は構造設計一級建築士とか設備設計一級建築士とか細かいのもあるのですが、大きく上記三つの建築士資格があります。
たとえて言うなら、バイクの免許と一緒ですね。
大型二輪免許ならどんなバイクでも乗れますが、普通二輪免許(昔風に言うと中型)だと、排気量400ccまでに限られています。これが一級建築士と二級建築士の違いみたいなものです。
普通二輪免許でもAT限定免許がありますが、まあこれが木造建築士みたいなものですね。
自分の家の設計をお願いするなら一級がいいのか?
前のセクションで建築士のそれぞれの免許の違いを説明しましたが、上記の説明だけ見ると一級建築士にお願いした方がいいのではないか?と思いますね。
しかし、実はそんなことはありません。
確かに一部ハウスメーカーで扱っている家を建てようと思うと、そもそも一級建築士じゃないと建てられないというケースはあります。
例えば鉄骨造を扱う、ダイワハウス、ヘーベルハウス、積水ハウス やセキスイハイム等の家の場合、二級建築士だと延床面積が100㎡を超える家は建てられません。
我が家もヘーベルハウスで3階建て延べ床面積110㎡なので、二級建築士では建てられない家になります。
また、RC造(鉄筋コンクリート)を扱う、パルコンやレスコハウス、ミサワホーム、三菱地所ホームなども、鉄骨同様二級建築士だと延床面積が100㎡を超える家は建てられません。
つまり、木造以外の住宅でそれなりの広さや階数や高さのある家を建てようと思うと必然的に一級建築士が担当になります。
確かに一級建築士であれば、どんな建物でも設計できますので、たとえ木造の小さな家でも一級建築士がいる事務所や会社にお願いしたいと思ってしまうかもしれません。
しかし、一級だからってなんでもできるとは限りません。
結局この世界は経験がものをいう部分が大きいというのは確かです。また、設計士のセンスも。
正直、建築士免許なんて受験資格さえ満たしてしまえば誰だって取れます。私も建築学科を出ていますので、今から二級建築士免許を取ることができます。
車の運転に例えるのが分かりやすいかもしれません。
運転免許を取ったばかりの人の運転する車に乗りたいですか?少なくとも私は乗りたくないですね。
確かに運転する資格はあります。でも、圧倒的に運転経験もないし技術は免許をとれた程度のモノしかないかもしれません。
ペーパードライバーもそうですよね。
同じ一級建築士でも、例えばヘーベルハウスの設計士に木造の高断熱高気密住宅を設計してと頼んでも、彼らは鉄骨住宅は得意でも木造は仕事で扱いませんので経験が足りないでしょう。
へーベルの一級建築士と、一条工務店の二級建築士だったら、どちらの方が冬暖かく夏涼しい木造の家を上手に設計できると思いますか?
つまりそういうことです。
まとめ
自分の家を建てるハウスメーカーや工務店を選ぶときに、所属するもしくは担当する設計士が一級なのか二級なのかを気にする必要は原則ありません。
個人住宅程度であれば、一部のS造やRC造住宅を除き、二級建築士でも事足りるサイズであるケースが多いです。
それよりも大事なことは、その設計士が過去に設計した家などを可能な限り見せてもらうことです。
設計士にもセンスがありますし、どんなにセンスが良くても自分自身の好みに合わないセンスだと、その設計士とは合いません。
ハウスメーカーだと設計士で指名はできないケースは多いですが、自分の好みの家の例や、そもそもそのメーカーの建築事例で気に入った事例があれば、その事例を設計した設計士をアサインしてくれるケースもあるかもしれません。
まとめのくせに長くなりましたが…
- 一級とか二級とかでこだわって探す必要は原則ない(1級建築士が必要な規模の家なら最初から一級建築士が付く)
- 一級と二級の違いよりも、その建築士の経験やセンスがものを言う
ということです。
ハウスメーカーというより、工務店選びの際には特にこのあたり思い込みで建築会社を選ばないように注意しましょう。
今回は以上です。