まず最初に。
このブログは我が家の家造りレポートをメインとしていますが、たまにはちょっと横道に逸れてみます。
妻の親友が注文住宅を検討しています。
厳密に言えば、我々が今回の建築計画を立てる前から計画を進めていたが、我々が追い越した形になりました。
以前、そんな友人たちがハウスメーカー選びに行き詰まっているという話を聞いていたので、相談に乗った話を書いたかと思います。
その時の真面目なお話はこちらを読んでみて下さいね。
家造り相談会
親友の家へは公共交通機関なら新幹線、車なら高速併用で三時間という距離感なので、なかなか気軽に遊びに行けない距離です。
友人夫婦はまだ幼い子供が二人いるので、業者との打ち合わせでも子供の面倒を見ながら…とか、家で夫婦で検討しようにも子供を寝かしつけてから…と、子育て事情もありなかなか検討が進まない状態でした。
では、我々も現在家づくりを進めているから色々相談とかかねて話そうということで、一年ぶりくらいに友人宅へとお邪魔しました。
というわけで、何故か子供に好かれる私がお子さんたちの気を逸らし、妻と友人夫婦で家造りの相談会とあいなりました。
友人夫婦は完璧主義というか真面目で、一つ一つ疑問を解消させてから前へ進もうというタイプなので、よく見かける勢いでハウスメーカーの営業に言われるままに進めて後から失敗した!というパターンには陥らなそうな半面、営業がイマイチだと遅々として話が進まないというデメリットもあります。
また、家に取り入れたい要素の一覧をエクセルで作成し優先順位をつけて管理しているあたり、理系夫婦らしい生真面目さがあって良いのですが、漠然とした家のイメージが出来上がっていないというのが大きな問題でした。
欲しいパーツを寄せ集めても、それだけでは家は出来上がらない。
家事動線、生活動線、そしてゾーニングを組み立ててから、そのパーツを一つ一つ当てはめていく作業が必要だというアドバイスをしながら、お話を聞きました。
導線を一から作ろうというやりがちな落とし穴にはまっていたので、今住んでいる家で改善したい点を中心に、現在の生活スタイルを詳しくヒアリングしていくと、友人夫婦の生活が見えてきました。
そして、友人夫婦が数社に見積もり依頼を出して返ってきているプラン案を見ると、各社とも友人夫婦への基本的なヒアリングが足りてないなぁと思いました。
パーツパーツで見ると綺麗なプランニングですが、パーツの組み合わせがイマイチで全体的なゾーニングがうまく行っていないように見えます。
ただ、これは友人夫婦が出した条件一覧エクセルの票を愚直に取り込んだ結果であったのです。
住友林業との打ち合わせに同席した
友人夫婦宅に泊まりに行った翌日は、友人夫婦は候補メーカーの一つである住友林業との打ち合わせがあるということで、是非同席してほしいと言われ同席することにしました。
打ち合わせでは、子供がぐずったりするのを相手にしながら考えなければならないということに困っていたので、今回は主に子守役のつもりでついていきました。
もし、我々夫婦がヘーベルハウスで建てなければ古河林業か住友林業になっていたと言うくらい、最終的な候補メーカーの一つでした。
なので、正直楽しみだったのもあります。
打ち合わせが始まり、私はお子さんを連れてキッズルームへ行き一緒にブロック遊びをしていました。
しかし、途中で別の打ち合わせ中のご夫婦のお子さんもキッズルームにやってきて、子供同士が一緒に遊び始めると、おっさんはすぐにお払い箱です(笑)
子守に行ったのに子供に相手にされないのではやることもないわけで、仕方がないから打ち合わせ中の友人夫婦に合流しました。
そこでは、機能性にこだわる旦那さんによる細かい注文(窓の性能についてとか…)と、提示されたプランに納得がいかないが、どこが納得いかないのかがわからない奥さんという状況で、住林の営業は果たしてどうやって進めたらよいのか…と途方に暮れつつありました。
今回設計士も同席しており、まだ20代後半?と思われる若々しいイケメンでした。
「ああ、住友林業さんは打ち合わせに設計士が同席してくれるんだなぁ…ウチの時は契約の重説で一級建築士が来ただけだったな…」
なんて思いながら、やり取りを聞いていました。
友人夫婦とはいえ、人生の大きな買い物に口出しするのもアレなので横で黙って聞いていたのですが、さすがに行き詰まっていたのかアドバイスを求められました。
アドバイスを求められると、大人気ないのは私…
ここから私のターンが始まってしまいました。
お前はどこの設計コンサルだ?!
アドバイスを…と言われたので、ここは私が仕切らせていただきます…とは言いませんでしたが、そんな雰囲気を醸し出し、まったく客でも何でもないただの付き添いの私は、住林の営業氏に「紙をください」と要求しました。若干引きつりながらもA3の紙をくれた住林さん。やはり大企業さんは余裕が違いますな。
私はそのA3の紙にさらさらと、今友人夫婦が住んでいる借家の図面を書き始めました。
書きながら私は、「建築家の先生ってのは、自分が理想とするプランニングを推してくる人も多いのだけど、実際にそこで暮らすのはお前じゃねぇんだからな?!っていつも突っ込みたくなる。劇的ビフォーアフターとかドリームハウスを見てると、設計士の建てたい家を作って施主ドン引きみたいなケースもけっこうあるけど、プランニングの主導権は必ず施主が握らなきゃダメ!」みたいな、住林に対する挑発とも思えるような発言をしつつ、図面が出来上がったら友人夫婦の奥さんの方に、
「今、家事をしている時の動線をここに描いて。」とオーダー。
奥さんは、洗濯家事の動線、買い物からのキッチンへの運び込み動線、日中の子供たちの遊び相手動線など、昼間の動線を書き込んでいく。
旦那さんは、仕事から帰宅したらどこにいるのかを聞くと、動線と呼べるほどのものもなかった。
現在の動線が書き込まれた状態で、私は住林さんに説明する。
今この夫婦の家のゾーニングはこうなっています。我々が泊まりに来た時に入る範囲、重なる家事の動線範囲、家族しか入らない範囲。
そして、日中の過ごし方からわかるように、この部屋は実態としてこういう役割を持っていますと説明。
そこから、奥さんには今の動線で不便を感じている部分をピックアップしてもらった。
例えば、洗濯室から物干し場所は階が違うので階段を通って、どこかの部屋を横切って…など。
あとは、色々ついている便利装備は実際に使っているのか?など。
例えばキッチン裏に勝手口があるが、希望条件にも勝手口とあるが、今現在勝手口使っているのか?という使用実態の確認。→結果ほぼ使っていない。などなど。
こういう現実の生活を掘り下げるヒアリングを行い、先ほど描いた今の家の図面は貴重な情報集となった。
ここまで埋まって、今度は住林さんに話を振る。
住林さんの提示したプラン案と、今ヒアリングした情報の矛盾点がココとココと…。
この部屋とこの部屋って、現在の生活スタイルだと分ける必要なさそうだとか、そういった要点を伝える。
同席していた建築士の表情が変わる。まさに水を得た魚のように目が輝きだし、そして一心不乱に図面をスケッチし始めた。
営業氏に至っては、「このメモ、是非コピー取らせてほしいです!」と前のめり。
一気に空気が変わった。
なんとなく気に入らないのだけど、何が気に入らないのかわからなかった図面の問題点が、ここにきて可視化された。
「動線を新たに考えるんじゃなくて、今の動線の延長もしくは、改善をメインで今住んでいる家を改造するならどうしたいかって観点で広げてみて?」というアドバイスは、友人夫婦よりも住林に刺さったようだった。
設計士がその場でプランを書き起こす中で、営業氏は私に「ただの(子守代わりの)ご友人と伺っていたのですが、もしやどこかの設計士さんとか建築コンサルですか…?」と恐る恐る聞いてきた。
ここで正体を明かす。
「建築学科を出たけど、二級建築士試験当日寝坊して試験を不戦敗した設計士のなり損ないで、今は全く建築関係ない業界の人」と。
営業氏はなるほどと得心のいった風であった。
弊社で家を建てませんか?
設計士さんが、今までのお話からその場で即興でプランを書いてくれていたものが出来上がってみんなで講評。
物凄く良くなっている!この設計士センスありますわ…
友人夫婦もこの出来には納得。
ちょっと細かな調整や、動線の整理などの会話を進める中で、この敷地ならではの特性などから大開口があった方が良いよねなどそういったお話も出てくる。
ちょいちょい私も、「住林の構造ならこれくらいの間口大丈夫ですよね?」とかチャチャを入れる。
住林営業「この人何でこんなに詳しいの?」というリアクション。
で、途中からお金の話になるということで私は一時退席。住林のショールーム見学へと旅立つ。
頃合いを見て席に戻ると、若干のリラックス雑談タイムになっていた。
営業氏、おもむろに私に「あの、今ご自宅は…?もしこれからなら是非とも弊社で…」
こんな、明らかにめんどくさくなる客だとわかりきっている相手にでも、営業アプローチを忘れないあたり、営業の鏡だと思いましたよね。
「正直住林さんも候補だったんですけど、密集狭小住宅街の川崎なので、『比類なき壁』のコンセプトを選んでしまいまして…」
営業氏の表情の奥に垣間見えました。「くそ、へーベルかよ…」という悔しそうな顔が(笑)
今回、ある意味で貴重な体験をしました。
ウチはヘーベルハウスと決めていったので、他社では具体的なプランのお話はしたことがなかったのです。
こうやって、住友林業さんの実際の打ち合わせを体験して、住友林業さんの提案力や商品の品質の良さなどに触れることができて、とても良い経験になりました。
そして、ちょっとだけ思いました。
俺やっぱりへーベルより住林の方が好きだなぁ…と(笑)
木の温もりって日本人の魂に刻み込まれているんでしょうね。
住林ではなくへーベルを選んだからには、思い切りインダストリアルに作ってやろうと、密かに決意しこの日は終わりました。
もう少し色んなメーカーの提案とか受けてみたかったなぁと思った昼下がり。
もしこれから、注文住宅をと考えているなら、心に決めたメーカーがあっても他のメーカーの説明も受けてみたら面白いですよ、きっと。
今回はここまで。